震災支援ネットワーク埼玉

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第5回 避難者状況調査報告(1):首都圏避難者のストレスレベルが反転上昇

2016年度避難者状況調査の概要

私たち震災支援ネットワーク埼玉は、2011年3月、さいたまスーパーアリーナが一時避難所となり、東日本大震災および東京電力福島第一発電所の原発事故による避難者を受け入れた際に駆け付けたボランティアの中で、弁護士、司法書士、医師、看護師、臨床心理士、社会福祉士、ITスペシャリストなど、各方面の専門家により相談を担当したグループで、以来、被災者支援活動を継続して行っています。

2012年春に福島県から埼玉県へ避難中の世帯を対象として実施した「避難者状況調査」以来、毎年形を変えながら実施し、第5回目となった2016年度避難者状況調査は、以下の自治体にご協力をいただいて実施させていただきました。

  • 双葉町(関東1都6県):875世帯
  • 大熊町(関東1都6県):1,000世帯
  • 富岡町(関東1都6県):1,500世帯
  • いわき市(関東1都6県): 700世帯
  • 南相馬市(全国):6,200世帯
    合計:10,275世帯

皆様には多数の設問でご負担をおかけいたしましたことをお詫びさせていただきますと共に、ご協力をいただきました方には心より御礼申し上げます。

アンケートの構成

本調査の目的は、福島県外で避難生活を送る皆さんの現状の課題、問題点を集計、分析し、分析結果を、行政やNPOなどと共有し、今後の支援活動の指針としていくことにあります。

第一部のこころの状態に関する設問では、ストレス状況について簡易に自己採点できるようにした上で、こころに大きな負担がかかる場合に、その要因は何なのか?という事を第二部の設問により多角的に俯瞰できるような構成としました。

さらに、新たな試みとしてご希望に応じて各分野の専門家により相談対応を行い、また、状況/ご希望に応じて専門の支援員を派遣させていただいております。

電話・訪問により、アンケートではお聴きできなかったことも含めて詳細にお話しいただくことで気持ちの整理をしていただき、さらには抱える悩み、問題を解決できそうな専門機関/専門家をご紹介することで、解決に向けて、ご一緒に一歩を踏み出すことができればと願っています。当然ですが、個人情報は厳重に管理し、秘密は厳守いたしております。

集計結果については、早稲田大学 人間科学学術院およびSSN「避難者状況調査委員会」において分析/解析を継続的に行っておりますが、まずは今回の調査結果から見えてきたことをまとめてさせていただきました。

広域避難者が抱える深い心の傷

私たち震災支援ネットワーク埼玉は、早稲田大学 災害復興医療人類学研究所と共同で、2012年3月に埼玉県への避難者を対象にアンケート調査を実施させていただいて以来、避難生活中の皆さんのストレス状況について毎回集計させていただいています。設問としては、国際的に標準化された質問紙である「改訂出来事インパクト尺度」(略称:IES-R)を用いています。

さて、最近ではマスコミでもしばしば取り上げられるようになったPTSD=心的外傷後ストレス障害ですが、天災、事故、戦争、犯罪、虐待など、命の安全が脅かされるような出来事によって強い精神的衝撃を受けることが原因となり、精神的不安定、不安、不眠などの過覚醒症状やトラウマの原因となった障害の回避傾向、フラッシュバックなどが基本的な症状とされています。このIES-Rのスコアが25点以上となるとPTSDの可能性があるストレスレベルにある疑いがあるとされています。

1995年に発生した阪神淡路大震災が発生した3年8カ月後の調査では約40%の方がPTSDの可能性があるストレスレベルにありました。2004年に発生した新潟県中越地震では3カ月後及び13カ月後の調査では約21%という数値でした。

一方、2012年3月の調査(埼玉)では過去の震災と比較してはるかに高い67.3%という3人に2人がPTSDの可能性があるストレスレベルにありました。

2年後は埼玉県に加え東京都内に避難中の方に調査範囲を広げたのですが、59.6%と依然と高い数値でした。4年後は52.5%、5年が経過した2016年には32.9%とおよそ3人に1人と低下する傾向にありました

2016年春にストレスレベルが低下したのは、原子力賠償紛争審査会の中間指針 第四次追補により、移住に伴い新たな住居を取得するための損害賠償が示され生活再建の柱となる家屋の確保の見通しがついた方が多いことが大きな要因の一つであるように思われます。実際、調査結果では、すでに25%の方が福島県外に移住し、新たな人生の再スタートを切り始めていらっしゃるようです。

ところが、6年が経過しようとしている2017年には51.9%と反転してしまっている状態となっています。

まずは、ストレスを高める要因となったものは何なのかを探ってみたいと思います。

ストレスの原因を探る

「PTSDの可能性」があるほどの強いストレスの要因となるものを調査用紙の中でさまざまな角度からお尋ねさせていただきました。回答をつぶさに分類してみると1、心理的要因、2、社会的要因、3、経済的要因という3つが浮かび上がってきます。

1、心理的要因

  • 原発事故発生当初1週間に「死の恐怖」を感じたこと
  • 「ふるさとを喪失」したつらさ、
  • 地域の人との関わりの中で避難者であることによって「いやな経験」をしたこと

2、社会的要因

  • 悩み・気がかり・困ったことを「相談」できる相手が近くにいない
  • 何でもきさくに打ち解ける仲間、コミュニティが失われてしまった
  • 長期化する避難生活の中で、家族との関係がうまくいかなくなってしまった

3、経済的要因

  • これからどのようにして生計を立てていくかという心配
  • 生活の基盤となる家をどうするか
  • 避難先での仕事の問題

さらには、自由記述欄にお書きいただいている内容を集計してみると、これから先の見通しができないことによる「不安」、国や東京電力などに対する「不信」、さまざまな政策、除染作業などへの「不満」などが複合的に絡み合ってストレスを高めているものと思われます。

6年が経過してストレスレベルがなぜ反転?

2017年3月末をもって自主避難世帯に対する住宅の無償供与が終了となります。東京電力は1度だけ、ごくわずかな賠償金しか支払をしていません。
多くの自主避難者の方々はお子様への放射線によるリスクを回避するために福島を離れています。

そんな自主避難者の方に、「原発の近くでなかったら、みんな平気で住んでいるんだし、福島に戻れるんじゃない?」というようなことを安易に口に出す人がいます。

しかし、小さかったお子さんも6年が経過し学校に通うようになると、簡単には動くことができません。中には避難元の親類から「なぜ逃げたの? いつまで避難しているの?みんなこっちで普通に暮らしているのに」などと言われてしまい、戻るに戻れない方もいらっしゃいます。

お子さんが首都圏での暮らし、学校生活に慣れて、お友達と仲良く勉強もできている場合の方がむしろ多いかもしれません。しかしマスコミで”いじめの問題”が報じられることで、周囲が気を遣うことで何とも耐えがたい空気を感じているお母さまもいます。

父親だけが避難元で仕事を継続する場合には二重生活。避難元の家にローンが残っている場合、ただでさえ家計は苦しい所に、住宅の無償供与が終了してしまうことで自主避難中の皆さんの暮らしはますます困窮していく恐れがあります。

新たな自主避難

2014年4月には田村市都路地区東部、2014年10月そして2016年6月には川内村東部の避難指示が解除されました。続いて2015年9月5日楢葉町の避難指示が解除され、2016年6月には葛尾村、同7月には南相馬市の帰還困難区域を除く区域の避難指示が解除となりました。

避難指示解除の1年後には、東京電力による精神的慰謝料の支払いが停止となり、これらの区域から避難生活を続けている方は“新たな自主避難者”ということになるわけです。ちなみにこれらの解除された地域への住民の帰還率は2017年1月末現在では約13%にとどまっている状況にあります。

(画像提供:福島民友社)

そして2017年の春には1万5千人におよぶ新たな自主避難者が生まれることになります。2017年3月31日には浪江町、飯館村、川俣町山木屋、4月1日には富岡町の居住制限区域、避難指示解除準備区域が避難指示解除となります

解除対象は、避難指示解除準備区域7469人、居住制限区域7858人の計1万5327人(1月末現在)が”新たな自主避難者”となるわけです。避難指示が解除となることで、1年後には東京電力による精神的慰謝料の支払いが終了し、避難住宅の無償供与も終了となる見込みです。

首都圏避難者はますます追い詰められる状況にあります。(続く)

「“原発避難いじめ” 大人も半数近くに」NHKニュースから

2017年3月9日、「“原発避難いじめ” 大人も半数近くに」というニュースがNHKのニュースで報じられています。

震災支援ネットワーク埼玉では早稲田大学 人間科学学術院と共同で2012年以来、原発事故による福島県からの避難者状況調査を、避難元自治体のご協力をいただき実施させていただいておりますが、2017年2月に実施した調査では、NHK 社会部と共同で「原発避難いじめ」に関する特別版となる調査用紙を同封させていただきました。

この調査では、いじめを受けていた子どもたちと同じく、大人たちも「賠償金」などを理由として避難先で嫌がらせや精神的苦痛を受けていて、その数は全体の半数近くに上ることが明らかになっています。

3月8日 のNHK総合「クローズアップ現代+ 震災6年 埋もれていた子どもたちの声 ~“原発避難いじめ”の実態」の番組放映までに届き集計することができた741件のうち、「子どもがいじめられた」と回答いただいたのは54件に上りました。

さらに、本調査ではお子さんだけでなく、大人の方も対象とした設問にご回答いただいているのですが、全体の半数近い334人が、大人も避難先などで嫌がらせや精神的苦痛を感じたことがあるとのご回答をいただいています。この内容については、賠償金に関するものが最も多く274件、避難者であることを理由としたものが197件、さらに、放射能を理由としたものが127件となっています。(複数回答)

NHK 3月9日の朝7時のニュースでは、「避難者であることを理由に団地の行事に参加させてもらえなかった」や「自動車に傷をつけられた」、さらに、「転職先で賠償金をもらっているから資格や給与をあげる必要はないと言われた」など具体的な嫌がらせや偏見の内容を報じています。

昨今大きな話題となっている“原発避難いじめ”の実態として、子供だけの問題ではなく、大人の間に差別や偏見が広がっていることが明らかとなったものと思われます。

当団体の副代表で、早稲田大学人間科学学術院の辻内琢也教授は「賠償金が生活環境やふるさとを奪われた人たちに対する償いであるということが忘れ去られてしまっている。多くの人たちが原発事故の被害が今でも続いていることを知ることが大切だ」とコメントしています。

避難者の高速無料化措置、平成30年3月31日まで1年間延長

2月13日、石井国土交通省は、東京電力福島第一原発事故による避難者および自主避難者のうち「母子・父子避難」世帯を対象とした高速道路料金の無料化措置を平成30年3月31日まで1年間延長する方針を示しています。

併せて、料金所通過時の手続きの迅速化も検討するようです。

詳細は福島民報のこちらの記事をご参照ください。

・正式な発表がNEXCO東日本のホームページに掲載されています。

  • 詳細等については、別紙【PDF:297KB】PDFへリンクをご参照ください。

 

 

医療機関での窓口での一部負担金の免除

福島第一原発の事故による被災者の方には医療機関での一部負担金の免除措置については避難指示区域所得によって下記の表の通り区分されることが2016年3月1日付けで全国健康保険協会より発表されています。

免除措置の継続となる方には、更新した免除証明書を平成28年2月末までに送付されているとのことです。

万一、対象であるにもかかわらず、更新された免除証明書がお手元に届いていない場合、最寄りの協会けんぽ支部、あるいは国民健康保険の場合には避難元の役所に問い合わせするようにいたしましょう。

対象区分 有効期限
特定避難勧奨地点の指定が、平成26年度に解除された区域の上位所得層(※2)に該当する方 平成28年2月29日
をもって免除終了(※3)
避難指示解除準備区域の指定が、平成27年度に解除された区域の上位所得層(※2)に該当する方 平成28年9月30日
(※3)
現に帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域に指定されている区域の方 平成29年2月28日
旧緊急時避難準備区域の方(上位所得層(※2)に該当する方を除く)
特定避難勧奨地点の指定を受けていた方(上位所得層(※2)に該当する方を除く)
避難指示解除準備区域の指定が、平成27年度までに解除された区域の方(上位所得層(※2)に該当する方を除く)

(※1)被保険者とその被扶養者が保険医療機関・保険薬局及び指定訪問看護事業者で受けた療養に係る一部負担金をいいます。

(※2) 上位所得層とは、事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額が、53万円以上の被保険者をいいます。

(※3) 平成28年3月以降、上位所得層から一般所得層(標準報酬月額50万円以下)に所得区分の改定が行われた場合は、改めて免除申請をしていただくことで所得区分の改定された月より免除措置の対象となり、一部負担金が免除されます。

詳しくは、全国健康保険協会のこちらのページをご参照ください

避難指示区域については経済産業省のこちらのページをご参照ください

*本措置は、年度ごとに更新/見直しが行われていくものと思われます。平成29年(2017年)以降の対応については、新たな発表を待つことにいたしましょう。

日弁連:避難指示の解除、慰謝料支払の打切りに反対する会長声明

2015年6月12日、政府は、福島復興加速化指針を改訂し、福島県の居住制限区域と避難指示解除準備区域について、避難指示を遅くとも2017年3月までに解除するとの目標を定めることを公表しています。

これに対して、日本弁護士連合会では会長声明を発信。政府に対して以下の通り求めています。

“当連合会は、政府に対し、避難指示の解除については、各地域の実情を十分踏まえ、地元や対象住民との協議も十分行った上で、個別に慎重に判断すること、一律に2017年3月までに解除すると期限を区切らないことを求める。

また、政府及び東京電力に対し、被害者の被害の実情を十分に踏まえ、避難指示区域からの避難者に対する慰謝料の支払を一律に2018年3月分までで打ち切ることのないよう求める。”

詳細については、日本弁護士連合会ホームページのこちらの記事「避難指示の解除、慰謝料支払の打切りに反対する会長声明」をご覧ください。

日弁連:区域外避難者への応急仮設住宅供与終了の撤回を求める会長声明

福島県は、2015年6月15日、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難者が入居する応急仮設住宅と民間借り上げ住宅の無償提供を、避難指示区域以外からの避難者(区域外避難者)については、2017年3月末で終了すると発表。

これを受けて、日本弁護士連合会では、2015年6月26日に会長声明を表明。政府に対して下記の通り求めています。

“当連合会は、政府に対し、改めて被災者の意向や生活実態に応じて避難先住宅の供与を更新する制度の立法措置を講ずるよう求めるとともに、福島県に対し、十分かつ具体的な支援策が実現しないまま一律に区域外避難者への応急仮設住宅の供与を2017年3月末で終了するとしたことを撤回するよう求める。”

詳細はこちらの記事「区域外避難者への応急仮設住宅供与終了の撤回を求める会長声明」をご覧ください。

日弁連:区域外避難者への避難先住宅無償提供の終了に反対する会長声明

2015年5月28日、日本弁護士連合会では、「区域外避難者」に対する避難先住宅の無償提供について、福島県が2016年度で終える方向で市町村と協議しているとの報道(2015年5月17日付け朝日新聞、同21日付け読売新聞、同26日付け毎日新聞)を受けて、会長声明を表明。福島県に対して下記のように求めています。

“当連合会は、福島県に対し、区域外避難者への避難先住宅無償提供を2016年度で打ち切る方針を撤回し、長期の住宅提供期間延長を求めるとともに、政府に対し、上記延長による費用を東京電力に求償する(子ども被災者支援法第19条)ことで国庫負担を継続し、災害救助法に基づく支援を改め、被災者の意向や生活実態に応じて更新する制度の立法措置を講ずるよう、重ねて求める。”

詳細についてはこちらの記事「区域外避難者への避難先住宅無償提供の終了に反対する会長声明」をご覧ください。

原発事故と自殺に因果関係を認める判決。東電に賠償命令

原発事故の事故の影響で避難生活を余儀なくされた福島県川俣町の女性が、一時帰宅した2011年7月に焼身自殺なさいました。これに対して遺族が自殺の原因は、避難生活でうつ病になったことにある、ということで起こした裁判で、2014年8月27日、福島地方裁判所は「自殺と原発事故の間には因果関係があり、生まれ育った地でみずから死を選択した精神的苦痛は極めて大きい」として、東京電力に対して遺族に合わせて4900万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。

自殺の原因が原発事故にあるということで、賠償を命じる判決が出たのは初めてとなっています。

さらに、「展望の見えない避難生活へ戻らなければならない絶望や、生まれ育った地でみずから死を選択することとした精神的苦痛は、容易に想像しがたく極めて大きい」として、4人の遺族に合わせて4900万円を支払うよう命じる判決を言い渡しています。

自殺の原因が原発事故にあるという、今回の裁判での判決の意義はとても大きいと言えるでしょう。

<各社の報道>

2013.11.29 埼玉県杉戸町への災害復興住宅建設に向けて 杉戸町議会報告

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埼玉県杉戸町議会 12月定例会において、本日(2013年11月29日)、「災害公営住宅建設に向けて」ということで、一般質問が行われる事を、福島県富岡町から避難中の被災者団体「杉戸元気会」の代表の方よりお知らせをいただき、議会の傍聴に行ってまいりました。

以下の通り質疑の概要についてご報告いたします。

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*本写真は議会事務局にご許可をいただき休憩中に撮影させていただきました。

「災害公営住宅建設に向けて」という一般質問を行ったのは、須田恒男議員。

4つの一般質問のうちの一つとして、1時間の持ち時間の半分以上を費やしての質疑が行われました。

全議員及び杉戸町当局全員には、9月に行われた福島県富岡町議会における遠藤一善議員による一般質問「杉戸町に災害公営住宅の整備を」の質問及び答弁の概要が記された、とみおか議会だよりのコピーなどの資料が配布されていました。

須田恒男議員による質問の内容は次の通りです。

東日本大震災から2年9か月を迎えようとしている。未だ、原発事故による災害によって故郷に帰ることが不可能な方が多くいる。我が杉戸町にも、友好都市の富岡町の避難者が生活を営んでいる。

これまで国は、除染実施によって避難者には故郷に帰っていただく方針であったが、11月11日の報道では、「全員帰還」の原則から帰還困難区域及び区域外において、自・公両党は移住支援を進めるとの提言を首相に提出した。

そこで、杉戸町及び富岡町の9月議会での議論をふまえ、以下質問する。

(1) 報道をどのように受け止めたのか伺う。

◆古谷町長の答弁

自・公両党による提言は、年間被曝放射線量が50ミリシーベルト超の帰還困難地域については、今後何年かは帰還困難であることを明確に示し、新しい生活のための判断材料を、国として提示する責任がある事を指摘しており、除染やインフラ整備を優先することで全員帰還という、従来の政府方針の転換を促したものと認識している。

この報道を受けて私(の個人的な見解)としては、高線量地域で帰りたいのに帰れない避難者の方や低線量地区でも帰れない方々が、引き続き長期避難を余儀なくされている中で、多くの不安や心配事を抱えている事に対し、改めて迅速かつ明確な対応を示すべきであると考えている。

 

(2) 富岡町議会において富岡町長は、この報道がある前から杉戸町への災害公営住宅整備については 杉戸町でも協力したいとの意向がある旨の発言をしているが、発言の協議はされていたのか伺う。

◆古谷町長の答弁

杉戸町では6月に町内に避難中の富岡町民の方から、杉戸町内に災害公営住宅の整備に向けて、富岡町や福島県に働きかけていただくよう要望を受けた経緯がある。

その旨、当町の担当者を通じて富岡町の担当者に情報提供を行った。

その際、当杉戸町としては、富岡町から正式な協議を受けた段階で、できる範囲で協力を行う旨お伝えした。

その後については、具体的な協議はまだ行われていないという現状にある。

 

(3) 9月議会において古谷町長は、仮の町構想は、福島県内での取り組みであることから、この縛りが取れた際には考える旨の発言があった。 今後の考えを明らかにされたい。

◆古谷町長の答弁

災害公営住宅の整備については、避難者を対象とした住民意向調査の結果に基づいて、避難元自治体である富岡町が国および県と協議を進め、福島県内という縛りが取れた上で富岡町から正式に要望が来た段階で、当町としては富岡町の意向を踏まえ、できる範囲で協力したいと考えている。

町長の答弁を受けて、引き続き、須田議員より質問が行われ、事務担当部局である住民参加推進課長および町長による答弁が行われました。

最後に、須田恒男議員による質問は、次のような言葉で締めくくられました。

「今日は多くの避難をされている富岡町民の方を中心とする傍聴者の方がいらしています。ここで議論したものを、ぜひとも実行に移していただくよう(お願いするとともに)、この杉戸町に住みたいという避難されている方々がいる限りにおいては、ぜひとも、災害公営住宅を造っていただきたいという気持ちでございますので、今後とも、町長を始め担当部課においては、情報を共有しながら従事するように、私も力を添えていきたいと思いますのでお願いを致します。」

富岡町議会報告:埼玉県杉戸町への災害公営住宅整備に向けて大きな一歩

富岡町の平成25年第5回9月定例議会が9月17日から20日までの4日間の会期で、富岡町役場郡山事務所桑野分室(旧福島地方法務局郡山支局)において開会され、初日の9月17日(火)、遠藤 一善議員より「災害公営住宅について」一般質問が行われ、埼玉県杉戸町に災害公営住宅を整備することについての言及がありました。

以下の通り、宮本町長、横須賀企画課長の答弁とあわせて、その要旨を抜粋してお伝えさせていただきます。

◆遠藤議員による一般質問(要旨:抜粋)

災害公営住宅については、現在「県営」ということで、計画が進んでいる。

先行の500戸については、建設入札の不調などで計画がスムーズに振興されていない状況にある。

そのような状況の中、富岡町が主体となった町営の災害公営住宅の整備を進めていくべき時期に来ていると感じている。

特に、大玉村、三春町の災害公営住宅に関して、町としてどういう方針で進めていくのか、今までと同様、県営でいくのか方針を聞きたい。

また、富岡町は避難所を埼玉県杉戸町に設置した。その関係で現在も杉戸町に多くの人達が住んでいる

埼玉県杉戸町に住んでいる町民から災害公営住宅を埼玉県杉戸町に整備して欲しいという要望が町に届いている。

県外においても、スムーズに物事を進めるためには、やはり町が中心となり、町が先頭を切った町営の災害公営住宅の整備を進めるべきと考えるが、町の方針をお聞かせ願いたい。

(以降、事業再開支援についての質問:割愛)

◆宮本町長による答弁

県外避難者への施策として、避難所を設置した埼玉県杉戸町に災害公営住宅の整備を進めるべきでは?についてお答えする。

埼玉県には富岡町民が約580名避難している。杉戸町には15世帯、38名の町民が避難している。

今後も杉戸町に住みたいという町民の要望もあること、杉戸町でも協力したいとの意向もあることから、現在行っている住民意向調査の結果を踏まえて、国及び県と検討することとなっている。

なお、意向調査について、町単独での建設が難しい場合は、避難している近隣町村にも働きかけるなど、できる限り対応できるよう進めていきたいと考えている。

◆遠藤議員

杉戸町に災害公営住宅を整備することに関して、杉戸町のスケジュールで動くのか、福島県のスケジュールで動くのか、それとも富岡町のスケジュールで動くのか、現在の打ち合わせの過程でどのような方向性で進んでいるのかお聞かせ願いたい。

◆横須賀企画課長による答弁

杉戸町については、個別協議というきちっとした協議は始まっていない。

杉戸町との間では、今回の意向調査によって、どのくらいの町民が住みたいか、その結果を踏まえて協議しましょう、ということになっている。

従って、町営ではなかなか難しいと考えており、杉戸町営という形ができないか検討していきたい。

富岡町と杉戸町の協定によって、杉戸町営という形は可能と考えるので、その辺りも踏まえて、意向調査の結果を踏まえて今後検討していきたい。

「個別協議」についてはこちらをご参照ください(復興庁資料PDF)。

◆遠藤議員

意向調査の結果が出る前に、例えば双葉町など他の町と横の連絡を先行してやる方法もあると思う。

他の町村と先行して話をしていく予定があるのかお聞かせ願いたい。

◆横須賀企画課長

現在ほかの町村ということでは、双葉町、大熊町、浪江町、富岡町の4町で、いわきの個別協議会という形で合同で(災害公営住宅の整備を協議を)やっている。また、郡山においても合同の協議会がある。

他の町村との協議はできる状況になっているので、先行してやりたいと思う。

◆遠藤議員

(災害公営住宅の整備については)富岡町だけの問題ではない。

埼玉もそんなにどこにでも(災害公営住宅を)建てられる状態ではないと思われる中、杉戸町と富岡町とのつながりが一番強い

杉戸町の場合、先方が協力的であるので、ぜひとも富岡単独ではなくても、スピード感を持って実現できるようにしていただければと思う。

(追記)

以上の福島県富岡町議会 遠藤一善議員による一般質問および当局からの答弁については、「とみおか議会だより」vol.176(2013.10.22号)でも紹介されており、下記アドレスにてご参照いただけます。

http://www.tomioka-town.jp/gikai/assets_c/2013/10/176_11-3664.html


私たちSSNが、福島県議会に9月20日に陳情を行った3つの内容の3番めは以下の通り、この福島県富岡町と埼玉県杉戸町との取り組みをはじめとする、福島県外における災害公営住宅の整備について、県としても積極的に協力するように求めるものとなっています。

3 福島県外にも、災害公営住宅(復興住宅)を整備するため、必要な措置を講ずること

災害公営住宅の整備について、現状では「福島ふるさと復活プロジェクト」(平成24年度補正、平成25年度政府予算案)の中の「2,長期避難者の生活拠点形成」における「コミュニティ復活交付金」(長期避難者生活拠点形成交付金(仮称))が割り当てられています。

この対象地域は、本来、福島県内に限らず、「避難元自治体が原発避難者向け災害公営住宅を整備することとして、長期避難者生活拠点形成事業計画を作成した受入市町村」となっています。

避難先で生活再建を図ろうとする避難者の選択を尊重し、福島県外にも恒久住宅としての災害公営住宅(復興住宅)の整備を積極的に推進し、避難元自治体と福島県外の受け入れ先市町村が災害公営住宅の整備について計画を策定し実行する場合には、福島県としても、当該計画の策定及び実行に積極的に協力し、関係機関との調整を行っていただきますようお願い致します。

(9月19日に、埼玉県議会に対して行った陳情もこれに準じています。)

この福島県富岡町と埼玉県杉戸町との取り組みが、「福島県外にも災害公営住宅、あるいは代替となる住居の提供」を求めていく事の実現に向けての大きな一歩となるものと思います。

ぜひ、今後の動向に注目して参りたいと思います。