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クローズアップ2015:福島原発事故 自主避難者、先行き不安 仮設住宅後、見通せず 1年ごと延長「せめて数年に」(新聞記事)

クローズアップ2015:福島原発事故 自主避難者、先行き不安 仮設住宅後、見通せず 1年ごと延長「せめて数年に」(新聞記事)

クローズアップ2015:福島原発事故 自主避難者、先行き不安 仮設住宅後、見通せず 1年ごと延長「せめて数年に」
毎日新聞 2015年04月17日 東京朝刊

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東京電力福島第1原発事故で避難者に無償で提供されている応急仮設住宅について近く示される提供期限延長の有無に対し、福島県外の「みなし仮設住宅」に住む自主避難者の注目が集まっている。
現在の期限は2016年3月末で震災から5年後だが、阪神大震災での提供期限は4年余だったからだ。打ち切られれば自主避難者には行き場がなく、仮に延長されても1年ごとのため生活の先行きは見通しにくい。自主避難者は「ないがしろにされているかのようだ」と訴える。
【日野行介、町田徳丈】

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東日本大震災では福島第1原発の事故直後、福島県全域に災害救助法が適用され、県内外に避難した県民全員がその対象となり、応急仮設住宅が提供された。
間もなく避難指示区域が設定され、そこから避難したいわゆる強制避難者と、区域外から避難した自主避難者の区別は後から生じた。

応急仮設住宅は福島県内にプレハブなどで建てた建設型仮設と、県内外の公営住宅や民間賃貸住宅を利用するみなし仮設の二つに大別される。
福島県は県内の応急仮設入居者を強制避難者にほぼ限定したため、自主避難者の多くは県外のみなし仮設に住む。

災害救助法は関連法令で応急仮設の提供期間を2年と定め、激甚な災害の場合は1年を超えない範囲で延長を可能とする。
国や県はこれまで3回、毎年4月下旬〜5月下旬に1年ごとの延長を発表し、現在の提供期限は16年3月末だ。

仮に打ち切られた場合、強制避難者には復興公営住宅に移り住むなどのメニューが用意されている。
しかし、自主避難者は同住宅への入居要件を満たさない上、放射線への懸念から自宅に戻ることに二の足を踏む人も少なくなく、打ち切りは生活不安に直結する。

今月9日、安倍晋三首相は参院予算委員会でみなし仮設について聞かれ、「住んでいる方の安心にしっかり添えるように対応したい」と答弁。さらなる延長に前向きな姿勢を見せた。

とはいえ、そもそもなぜ応急仮設の提供は1年ごとの延長なのか。
法令に明記されているのはプレハブの耐久性だ。

災害救助法と関連規定によると、プレハブの耐久性を根拠に最初の提供期間を2年とし、1年ごとの延長もその安全性を確認して決める。
みなし仮設に充てられる公営住宅や民間賃貸住宅はプレハブより長期使用に耐えうるが、「期間を合わせなければ不公平」(内閣府担当者)との考え方だ。

だが避難者たちは「いつまで避難すればいいのか」という先の見えない状況下に置かれている。
夫と中高生の子供2人とさいたま市に避難する女性(43)は「先行きを見通せない1年ごとの延長ではなく、子供が学校を卒業する数年先までは今のまま暮らせるようにしてほしい」と切実に願う。

避難者の住宅問題に詳しい津久井進弁護士は「プレハブの耐久性を基に期間を決めるのはおかしい。従来の決まりに無理にはめ込むのではなく、避難者が安心して住めるよう考え方を改めるべきだ」と指摘する。

◇国・県とも責任逃れ

みなし仮設を巡る自主避難者の不利益は他にもある。

全町が避難指示区域とされた福島県浪江、双葉両町は12年春、避難者からの希望が強い県内外のみなし仮設の住み替えを認めるよう求めた。
当時災害救助法を所管していた厚生労働省と東電は同年8月、住み替えは認めないものの、強制避難者がみなし仮設などから転居後に自己負担した家賃を賠償対象とする通知を福島県に送った。事実上、強制避難者に住み替えを認めたものだが、自主避難者は対象になってはいない。

自主避難者に対する行政の姿勢を示したのが、現在は国が全額負担しているみなし仮設の家賃を東電に求償(請求)する問題だ。

毎日新聞が情報公開請求で入手した国の内部文書によると、厚労省と復興庁は13年5月24日、福島、岩手、宮城の被災3県と自主避難者を多く受け入れている山形、新潟、栃木、埼玉4県の担当者を福島市の福島復興局に集めて会議を開いた。
関係者によると、厚労省の担当者は、1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故で同県が事業者から救助費用の支払いを受けた例を挙げ、原発避難者の家賃は各県から東電に直接請求するよう打診。
しかし、県側から「なぜ全額負担している国ではなく県が請求するのか」と反発が出て、立ち消えになった。

東電は自主避難者の家賃負担に難色を示しており、政府内では強制避難者分だけを先行して請求することも検討されたが、結論は出ていない。
仮に自主避難者分を請求しないとなれば、自主避難者は「東電がその避難の責任を負わなくていい人たち」という扱いになる。13年5月の会議で国と県が押しつけ合った家賃の請求者は、自主避難者の扱いを決め、その理由も説明しなければならない。
「要は誰も説明責任を負いたくないんだ」。国の関係者はそう漏らした。

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◇「みなし仮設住宅」を巡る経緯

2011年

 3月11日 原発事故が発生。17日にかけて福島県全域に災害救助法を適用

   12日 福島県が避難者の受け入れを各都道府県に要請

   19日 厚生労働省が民間賃貸住宅や公営住宅の活用も可能と通知

 4月22日 国が年間20ミリシーベルト超の放射線量を基準とする避難指示区域を決定

2012年

 4月17日 厚労省が提供期間(2年間)の1年延長を決定

 5月18日 国が「やむを得ない場合を除き住み替えは認めない」との見解を示す

11月 5日 福島県が県外みなし仮設新規受け付けを12月28日で終了すると発表

2013年

 4月 2日 提供期間の延長は福島県など被災県が状況に応じて判断するとの考え方を国が通知

   26日 福島県が提供期限を15年3月末まで1年延長

10月 1日 災害救助法の所管が厚労省から内閣府に移る

11月12日 内閣府が福島県内の建設型仮設への住み替えを認める通知

2014年

 5月28日 福島県が提供期限を16年3月末まで1年延長

2015年

 4~5月? 福島県が提供期限延長の有無を決定し公表?

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